宇久井半島の特色

宇久井の海岸

南紀の特色でもあるリアス式海岸が続く中、宇久井半島は黒潮を感じさせる力強い荒波の外海と、港を持つ穏やかな入り江の内海の2つの表情をみせます。外海では、外洋からの大波が直接打ち寄せて来るので岩礁海岸の岩が皆丸く削られ、改めて波の持つエネルギーの凄さを感じることができます。一方、半島に守られた内海は波静かで、海水浴に利用されます。そんな海岸部は干潮時に歩くと、様々な生きものたちに出会うことができます。

海岸部を干潮時に歩くと、磯の生きものたちに出会えます。大形のクロフジツボをはじめ、フジツボ類はその体をしっかりと岩に固着しています。岩の裂け目に沿って群生しているカメノテもその柄部で岩にくっついています。またわずかな岩の窪みには、ヒザラガイ・ウノアシ・ベッコウカサガイなどの吸盤状の足を持つ貝類がしっかりと岩を捉えています。

海岸沿いの照葉樹林では、和歌山県の「県鳥」でもあるメジロが生息しており、年間をとおして見られます。陸上ではムクドリが多く見られ、冬にはジョウビタキやアオジなども訪れます。上空ではトビが舞い、海岸に打ち上げられた動物の死骸などの餌を捜しています。夏には時折アマツバメも飛びかいます。

磯では、クロサギ、イソシギ、イソヒヨドリなどが見られます。春と秋の渡りの季節には、千尋の浜(ちひろのはま)にキアシシギなどのシギ類が訪れます。また、駒が崎(こまがさき)の東側の断崖は、ウミウの「冬期集団ねぐら」となっており、10月から3月の夕暮れには数百羽が集結します。

外海・外の取

内海・千尋の浜

地玉の浜のタイドプール

カメノテ
ウミウ

宇久井の森

宇久井半島の植生は、大半が常緑の照葉樹林で覆われ、中に落葉樹が部分的に混じっています。

特に蛭子神社跡地や目覚山(めさめやま)の森は社叢として保護されてきたため、スダジイ、ホルトノキ、ヤマモモ、オガタマノキなどの大木が見られ、本来の地域の植生が残っています。また、ミカン科のハマセンダン、ショウガ科のアオノクマタケラン、シイの朽ち木に生え、発光するキノコのシイノトモシビタケなど、本州では珍しい南の植物も見られます。

その他の地域では、サツマイモを植えるために開墾された畑や、薪を取ったり炭焼きに利用された2次林(ウバメガシなど)があり、上地の浜への降り口には炭焼きの「かま」の跡もあるなど、身近な里山として利用されてきました。

それから宇久井半島は、南方系の昆虫類の宝庫でもあり、大型蝶類のミカドアゲハ、モンキアゲハ、ナガサキアゲハ、模様と飛び方のユニークなイシガケチョウなどが見られます。中でもイシガケチョウとイヌビワ、ミカドアゲハとオガタマノキ、カラスアゲハとハマセンダンなど、南方系の昆虫と植物との生態的なつながりが観察できます。それから半翅類であるオオキンカメムシの集団での越冬を観察でき、7月にはヒメハルゼミの大合唱も聞けます。これらのことは黒潮の影響を受け、冬でも暖かいこの地方の特徴といえます。

他にも子ども達におなじみのカブトムシ、ヒラタクワガタ、コクワガタ、ネブトクワガタ、カナブン、アオカナブンなども林内のシイやタブの樹液に多く集まります。

目覚山の森

ホルトノキの大木

社寺林・オガタマノキの巨木

アオノクマタケラン
シイノトモシビダケ
イシカゲチョウ

浜の植物

海岸やその付近では、キノクニシオギク、アゼトウナ、ツワブキ、タイキンギク、ハマナデシコ、ハマオモト、ハマゴウなど四季を通じて目に鮮やかな草花も見られます。

これらの浜の植物は、日射や乾燥・風害などのきびしい環境に耐えられるように様々な工夫をしています。根を深く伸ばしたり、葉を厚くし光沢を持ったり、また草丈を低くして地面を這うように広がって密集した群落をつくったりしています。これらの特徴は、浜で生きのびるための戦略なのかもしれません。

また、浜に立って海岸植物を眺めると、海からの風の方向と木のなびく方向が同じ方向に傾いていることがわかります。このような森林は風衝林(ふうしょうりん)と呼ばれています。

海岸の植生

キノクニシオギク

ハマオモト
ハマカンゾウ
ハマボッス

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