イザリウオの仲間は変形した腹ビレと尻ビレを
足のように使って、海底の岩の上を歩きます。太
くて丸い体と、手足のようなヒレから、イザリウオ
の仲間は英語でフロッグ・フィッシュ(カエルの魚)
と呼ばれています。体型やヒレの形から想像が付
くと思いますが、泳ぎは至って下手で、とても素早
くは泳げません。しかし、のろまなオオモンイザリ
ウオでも、目にと留まらぬ早業があります。それ
は餌を口にほうばるときです。オオモンイザリウオは頭の前に細長い突起があり、その先にはヒラヒラした皮膚の
変形物が付いています。彼は食事の時間になると、体の溝に沿って納められていたこの突起を、体から上方に
立て、少しの幅で振り続けます。まるで釣り竿の先に餌を付けて振っているようです。体は岩とそっくりな形と色を
していて、細い釣り竿の先の布切れのような、あるいは虫のようなものが揺れるのですから、付近にいる小魚にと
っては、海中でうまそうな虫が踊っているようにしか見えません。そこでこの虫を食おうと近づいた瞬間、オオモン
イザリウオの餌となってしまうのです。その早業は我々が水槽で何度見ても、スピードが速すぎて、どうやって食
うのかが分かりません。