巻貝には多くの種類があります。その中で、
殻の表面がピカピカに光っていて非常にきれ
いな貝の仲間があります。そうです、タカラガ
イの仲間です。タカラガイの仲間は熱帯地方
ではかつてお金の代わりに使われていました。
それも貝殻が美しいからに違いありません。
ではどうしてタカラガイの仲間だけがこのよう
な美しい貝殻をもつことができるのでしょう。
貝殻は貝の外套膜という膜にある石灰質を
分泌する腺から石灰分が出て、それが貝殻を
成長させます。普通貝類の外套膜は貝殻の
内側のみを覆っていて、貝は内側から貝殻を
成長させます。そこで貝殻の内側は普通ピカ
カに光っているのです。ところが、タカラガイの
仲間は外套膜が大変広く、貝殻の内側も外側もすっぽりと覆うことができるのです。それでこの仲間の貝殻は非常に光沢があるわけです。 骨軸のないサンゴであるウミトサカ類、特に串本海域公周辺に多いトゲトサカ類を見ていますと、小さなタカラガイのような貝がその枝の間に見つかることがあります。
これらはタカラガイの仲間でも、ウミウサギガイという類に属する巻貝で、どれもが付いているウミトサカに非常
によく似た色彩の外套膜をもっているために、海中でこれらを見つけることは容易ではありません。
写真はオオトゲトサカに付いているコダマウサギカイという種で、外套膜の色彩が付いているウミトサカの色
にそっくりなばかりでなく、外套膜の表面の突起がウミトサカの骨片にそっくりです。このように付いているもの
に姿形を似せるというのは、外敵から身を守るためによく用いられる手段です。
コダマウサギカイはこのようにトゲトサカ類の中で暮らしていますが、自分の家であるトゲトサカを餌にしてい
るのです。しかしこの長さ5 mmほどの貝の食べる量はトゲトサカの群体の大きさに比べてはるかに小さく、トゲト
サカの再生量や生長量の方が勝るので、この巻貝は食糧の尽きることがないのです。両者の関係は明らかで、
コダマウサギガイはトゲトサカ類に寄生しているのです。