茶色の海藻の塊のような姿をしたイラモは、強力な刺胞毒をもつクラゲの仲間です。串本しゅうへんの漁師は「モエラ」と呼んでいます。直径10 cm程度の群体で岩の上などに生えていることが多く、アサガオの花のような形をした個々のポリプは直径5 mmほどです。
イラモは日光がよく当たる岩の表面に生えていますが、地味な色彩のために知らず知らずのうちに触ってしまい、被害にあうことが多いようです。直接皮膚に触れたときには、チクッとした痛みを感じ、その後水疱ができ、かゆみが1週間程度続きます。広い範囲を刺されたときや、顔などの皮膚の弱いところに刺されたときには、ひどく痛むとともに発熱や大きな腫れを生じることもあり、完治するまでに長い日数を要することもあります。
さて、イラモが危険な理由として目立たないことが大きな要素となっているのは間違いありません。しかしながら、イラモが危険な理由は他にもあります。何と、イラモは間違って触らなくても、近付いただけで刺胞が刺さることがあるのです。イラモが意図して行っているわけではありませんが、刺胞を海中にばらまくことがあるのです。イラモを海中で観察していると、茶色の体が白くなることがあります。イラモの体は非常にもろく、人が近付いたときなどに起こる水流によって体の一部がちぎれ、一緒に刺胞が海中にばらまかれているのです。
刺された部位を45°C以上のお湯(我慢できる範囲)に30分以上浸けて痛みが退くのを待ちます。ショック症状が見られるとき、痛みや腫れが退かないときは病院などに行きましょう。